切迫流産・切迫早産の原因 『妊娠中毒症』

妊娠中毒症とは

妊娠中毒症とは、「妊娠に高血圧、タンパク尿、浮腫の1つもしくは2つ以上の症状がみられ、かつこれらの症状が単なる妊娠偶発合併症によるものではないもの」とされています。
国際的には、これをもっと狭く解釈して高血圧のみを主症状とする考え方が強くなってきていますが、日本では当分の間浮腫のみ・タンパク尿のみの場合も妊娠中毒症に含めるものとして解釈することとしています(1986年日本産科婦人科学会)。

発症頻度は全分娩数の6%~10%で、母体及び胎児・新生児に悪影響を及ぼすため、妊娠トラブルの中でも最も重要な疾患といえます。
また、妊娠中毒症は切迫早産を併発するケースも多く、その管理は大変に重要です。
妊娠中毒症の症状が表れるのは主に妊娠後期で、妊娠後期から定期健診が2週間に1度になるのも妊娠中毒症を早期に発見するためです。

妊娠中毒症の症状は、子宮を含む全身の血管系の小動脈が縮んでしまうことにより起こる症状と考えられます。
全身の血管が縮むことによって高血圧になり、腎臓の動脈が縮むことによって腎虚血からタンパク尿を引き起こし、子宮動脈が縮むことにより胎盤機能不全が起こります。
これによって、胎盤に血液が十分にまわらなくなり胎児の発育に障害が出たり、母体側としては頭痛・めまい・胃痛・吐き気に続いて子癇(意識不明のけいれん発作)がおきることがあります。

妊娠中毒症の3大症状

妊娠中毒症の主な症状は①高血圧、②タンパク尿、③浮腫です。これらのうち1つないし2つ以上の症状が表れた場合は注意を要します。
妊娠中毒症の3大症状 妊娠中毒症の判定基準
軽症 重症
①高血圧

血圧とは、心臓が収縮して血液を体へ送り出す時(最高血圧)と、心臓が開いて心臓に血液を集める時(最低血圧)のそれぞれの圧力を言います。
①最高血圧140㎜Hg~160㎜Hg
②妊娠前より最高血圧が30㎜Hg以上の上がったこと
③最低血圧90㎜Hg~110㎜Hg
④妊娠前より最低血圧が15㎜Hg以上上がったこと
最高血圧160㎜Hg以上、または最低血圧110㎜Hg以上
②タンパク尿

通常尿中には排出されないタンパクがもれてしまう状態が、タンパク尿です。
重症になると、母体が低栄養状態になって胎児の発育に影響を及ぼすことがあります。
24時間尿でエスバッハ方またはこれに順ずる測定法で30㎎/㎗~200㎎/㎗のタンパク質が検出された場合。一般に行われるペーパーテストの場合は、2回以上の検査をして連続して2回以上陽性の結果が出た場合。 24時間尿でエスバッハ方またはこれに順ずる測定法で200㎎/㎗以上のタンパク質が検出された場合。一般に行われるペーパーテストの場合は、2回以上の検査をして2回以上この値を超えた場合。
③浮腫(むくみ)

浮腫(むくみ)は細胞の中に水がたくさん溜まるということです。体重増加が1週間で500グラム以上ある場合は水分の過剰蓄積(浮腫)があると考えられます。
夜むくみ、朝とれるというのは生理的なむくみですから心配ありません。
向うずねを指で押して、陥没したままの状態に加えて、1週間に500g以上の体重増加があった場合。 顔や手など全身にむくみがある場合。

妊娠中毒症になりやすい人とは?

①高血圧・腎臓病・糖尿病・甲状腺疾患などにかかっている人。 またはかかったことのある人。
妊娠中には赤ちゃんの分だけ血液も老廃物も処理しなければなりません。
赤ちゃんの分だけ体に負担がかかります。
②高血圧の家系の人。
妊娠32週までに発症する早発型の妊娠中毒症では特に高血圧家系が多いです。
高血圧家系ではそれまで症状が無くても妊娠をきっかけに3分の1が妊娠中毒症になると言われています。
また、高血圧家系の女性は、妊娠中に高血圧を発症し(妊娠中毒症)、出産後血圧は正常に戻るものの、その後中高年になって慢性的な高血圧を発症するという経緯をたどることが多いとされています。
③35才以上の高年初産と15歳以下の若年出産 統計的に妊娠中毒症を起こす割合が高いです。
④前回の妊娠で妊娠中毒症を発症した人。 前回の妊娠で妊娠中毒症を発症した人は、
約半数が再び妊娠中毒症になるといわれています。
⑤太りすぎの人。
太りすぎの人はコレステロール値が高く
心臓にも負担がかかり血圧が上がります。
⑥双子・三つ子など多胎妊娠 赤ちゃんが多くなればその分血液もたくさん送り出さないといけないし、老廃物もたくさん処理しないといけませんから母体にとっては2倍3倍の負担です。
⑦立ち仕事、過激な勤務などのストレス 仕事のストレスは、切迫流産・早産の原因になると共に妊娠中毒症の原因としても考えられます。

妊娠中毒症の治療

妊娠中毒症は、妊娠しているが故の病気ですので出産してしまえば症状は治まります。しかし、妊娠中毒症の症状として胎児の発達が遅れることが多いので、母体の症状を見ながら胎児が出産に耐えられるほど大きくなるのを待つ、というのが基本的な治療の方向のようです。

妊娠中毒症の治療の基本は、①安静、②食事療法、③薬物療法の3つです。安静は症状の改善に大きな効果があります。安静にすることで血流の安定します。腎臓にも血液が十分わたることでタンパク尿が改善され、子宮への血液量が増加すれば胎児の成長・胎盤機能不全の改善につながります。
塩分制限により、浮腫・高血圧が軽減され、カロリー制限により、肥満や過度の体重増加を抑制します。
薬物療法は、あくまでも妊娠中毒症の母体症状の悪化を防ぐための対症療法にすぎず、妊娠中毒症の根本的な解決にはならないということを覚えておく方がよいでしょう。

[食事療法]
●総カロリー
 非妊時BMI24以下の妊婦; 30kcal×理想体重(㎏)+200g
 非妊時BMI24以上の妊婦; 30kcal×理想体重(㎏)
 (BMIの計算方法;体重(㎏)÷〔身長(m)×身長(m)〕
  例えば体重55kg、身長160cmの人は55÷(1.6×1.6)=
21.5
●塩分摂取
 1日7~8g程度とする(極端な塩分制限は勧められない)
●水分摂取
 1日尿量500ml以下や肺水腫では前日尿量に500mlを加える程度に制限するが、それ以外は制限しない。のどが渇いたと感じない程度の摂取が望ましい。
●タンパク質摂取量
 理想体重×1.0g/日
 良質のタンパク質が含まれるのは、卵、牛乳・ヨーグルトなどの乳製品、大豆他豆腐納豆などの加工品、肉類では脂肪の少ない赤身肉や鶏のささ身などが良いです。

[薬物療法]
降圧薬は、ヒドララジン(薬名;アプレゾリン錠・プレスフォール散・ヒドラブレス散・アソザート錠他)と・αメチルドパ(薬品;メチルドバ錠・メチドーバ錠他)が安全性が確立されており第一選択薬です。この2薬で不十分な時には他の薬を用います。

妊娠中毒症の方のためのお勧めグッズ

妊娠中毒症の治療・予防のために私たちができることとは、安静を守ることと食事に気をつけること、だと言えます。
なかでも、塩分・カロリー共に気をつけないといけない食事に関しては自分で1から考えるのは大変ですよね?お忙しいみなさんのヒントになればうれしいです!
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